8月6日

 部屋は10階にあって、上り降りするとき、エレベーターのドアのスリットから廊下と床が交互に9階ぶん見える。ゾートロープみたいだと思うけど、見えるのは奇妙なくらい似通った映像で、一様に埃を被ったエアコンの室外機のホースの向きがそれぞれズレているくらいだ。映画に挿入される静物画的なショットのように。こうやって映画を見ると面白いだろうかと思う。フィルムの上を滑る箱から見る映画は。それ自体はべつに面白くないけど、フィルムが動いてもわれわれが動いても同じことなんだということは面白い気もする。止まってあることが、帰属先から引き剥がされた運動のなかに投げ込まれることでもあるようなこともある。昔の映画の撮影現場では、モーター音とともに大量のフィルムがカメラに吸い込まれるなか、動きの少ない場面を撮影したりもしていたわけで、そういう状況ではやはり運動というものについて、動いているあれを止まっているこれで見る・撮るというだけに留まらせないものが、マッシブな存在感をもっていたのだと思う。

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カテゴリー: 日記