8月11日

 何か話したほうがよいのだろうけど、頭が読み取り専用になったように、聞こえてくる言葉がただ流し込まれる。僕はそういう言い方はしない、という細部への引っかかりだけが主体性めいたものとしてあってそこから出られず窓を眺めて、窓を眺めている人になった。だしぬけに好きな食べ物はありますかと聞かれ、食べるのは好きだけど好きな食べ物はとくにありませんというのが正直な答えだと思ったけど、そういうのは正直ではないのだと思いなおして肉ですねと答えた。

 部屋に三面鏡があって、いつぶりか自分の横顔を見た。最近よく人から痩せたと言われ、そのたびに髪切ったからだと思いますと言っていたのだけど、横から見ると確かに痩せていた。

 布団に入って、何か即興で怖い話を考えたら面白いんじゃないかと思って、夏、フェリーで隠岐島に行く。ハッチが開いて車を出すと両脇に島民が並んで、バンザイをしながら「ありがとう」と叫んでいる、というところで話が終わってしまった。

 そのあと見た夢の話。何かの営業マンと向かい合って座っていて、彼は「クリスチャン・ディオール」という名前の自動車保険会社の人だ。「クリスチャン・ディオールは、デザイナーの名前でもブランドの名前でもありません」というのが彼が話し始めるいつものやり方だ。

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カテゴリー: 日記