10月2日

さいきん格闘技の動画をYouTubeで見るようになって(どうしてかストレッチの動画から流れ流れて武術や格闘技の動画がオススメされるようになった)、那須川天心とか朝倉未来とか、名前は知っていたけどこんなにすごい人たちが出てきていたのかと今更のように驚いている。それで今日、RIZINという総合格闘技の団体の無観客・有料配信のみの小さな大会があって、どういう演出でやるのか気になったのもあってチケットを買って見た。でも演出は有観客会場の撮影でされるようなものと変化が見られなかった。入場曲をわざわざ現場のスピーカーで流してそれをマイクで拾って配信に乗せる意味もないし、映像的にはクレーンカメラが追加されたくらいだったし、明らかにお客さんだろうという半端な人だかりもあったし。都内某所の暗渠でやられていて、地下格闘技出身のふたりの試合がメインで、というのがいちおうのコンセプト(Dos Monosの「暗渠」がオープニングで流れていた)だったのだけど、リング以外の空間が真っ暗で、背景は大きなスクリーンが覆っていて怪しい地下空間という感じがなかった。夜間作業用のバカ明るい照明みたいなものがあって、だだっ広い空間にリングがあるような感じを期待していたのに(番組プロモーション映像はそんな感じだった)。コロナで受けたダメージの大きさを物語るようで逆に真に迫っていたとも言えるけど。

いや、そんなことより、いちばんびっくりしたのは春日井“寒天”たけし選手の存在だ。この驚きが伝えられるだろうか。彼は試合に負けた。それも、肘の関節をバキッと折られるという——こういうのを見るとやはり地上波はK-1までしか無理なのかと思う——かなりショッキングなかたちで。YouTubeに試合後インタビューの映像が上がっていて、包帯で腕を吊って氷を当てただけの状態でインタビューを受けていることにまずびっくりしたのだけど、ちょっと最初にいいですかと言って、彼はこの負けをもってもう引退するという話を始めた。その短い話のなかで5回くらい「岐阜県恵那市山岡町の寒天と志村道場を全国区にしたかった」と繰り返していた。僕はてっきり「寒天」というのは寒天みたいに捉え所がないとか、あるいはたんにナンセンスな名前をふざけて付けたとか、そういうことなのかと思うこともなく思っていたのだけど、「寒天」は寒天だったのだ。本当にびっくりした。彼の名前で検索するとウソみたいに大きな寒天の袋を肩に担いだボクサーパンツ姿の彼がトップ画像になった彼の活動と寒天を紹介するサイトが出てきて、この人は本物なんだと思った。彼は「〜を全国区にしたい」という言い回しに愚直に人生を賭けられる人なのだ。そんな彼が、自分はここまでの選手だ、もう体もボロボロで首も悪いし、腕も壊されたと泣きながら語っていて、なんだかすごくいたたまれない気持ちになった。

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カテゴリー: 日記