12月18日

キンドルのライブラリーを見ていたら大昔に買ったフロイトの『精神分析入門』があって、読み返している。それぞれの講義が「みなさん!」という呼びかけから始まっているのがいい。前半ではまず言い間違いが、次に夢が取り上げられる。いずれにも共通するのは、その原因が生理学的なものであるにせよ、そのつど言い間違いが「この」言い間違いとして、夢が「この」夢として現れることは純粋に心理学的に考えるべきだということだ。加えて、言い間違いは言うべきことを言う意図とそれを妨げる意図とのぶつかり合いであり、夢は昼の意識に対する夜の意識の復讐であり、つまり、ふたつのトピックはともに、(1)生理的な動因をもちつつもその内実を捉えるためには心理的な機序の解明がなされるべきものであり、(2)ふたつの心理的な傾向の存在が両者の葛藤を通して示唆されるものである。生理と心理の分離と、心理のうちでの意識と無意識の分離。なされていることの大きさと、そのつど最大限——結局のところそれ自体心理的な——反発に譲歩しながら説き起こす態度の慎ましさのギャップに心を打たれる。僕はいつも概念、とくに対立するふたつの概念を前提してから話をすることが多いので、初手からのるかそるかになってしまいがちだ。僕も「みなさん!」と言って始めるべきなのかもしれない。

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カテゴリー: 日記