1月9日

あと10日でこの日記も終わりだ。私家版の制作も進んでいて、印刷所から見積もりが来た。まさかこれまででいちばん高い買い物が自費制作の本365部になるとは思わなかった。ちゃんと売れてほしい。お金のこととは別に、もはやいままで書いたことをほとんど忘れていて、筆者も覚えていないものを本にしていいのだろうかと思うし、覚えていないので自信のもちようがない。ゲラができれば校正で読み返すのだけど、その時点でもうポイントオブノーリターンは過ぎているし。無茶と言えば無茶だが、この一年の日記を本にするとして、ちゃんと自分の生活に明白なリスク込みで跳ね返るかたちにするのは誠実と言えば誠実なのかもしれない。

なんとなくカキフライを作ろうと思ったのだが、水の詰まったパックを開けて塩水を張ったボウルで牡蠣をひとつずつ洗っているとむなしくなってきた。汚れが浮いて磯臭くなった水を捨てて、牡蠣をキッチンペーパーで拭いて、小麦粉をつけて、溶き卵に潜らせて、パン粉を振って。揚げてソースをかけて食べるだけ。出てくるぶんには嬉しいが、作って食べるのには悲しい料理だ。工夫らしい工夫と言えば磯臭さを落とすことくらいで、それはしばらくシンクに残り続けるわけで。バットやボウルの銀色がよそよそしかった。

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カテゴリー: 日記