10月6日

僕は大半の大学人はものを書くことから逃げていると思う。大学行政とか科研費とかシンポジウムとか言い訳はいくらでも用意されている。でもそれはプロのサッカー選手が右利きだからと言って意地でも左脚ではシュートを打たないのと一緒だ。どんな体勢でも打つべきときに打たなきゃいけない。そういう仕事なんだから。軸足を存分に踏み込んで、風を受けた旗みたいに体をたわませて思いっきり右足を振り抜くような場面がお膳立てされることなんてないというのは前提であって、やらない理由にはならない。フリーキックがあるじゃないかって? 自分が蹴らせてもらえるとでも?

というのは気づいたら頭の推敲していた意地悪な文章で、今日も引き続きワクチンの副反応(「副作用」ではなんでダメなのか結局わからない)でしんどかった。しんどいが頭は冴えているし体も動くので、気を紛らわせるためにレンジフードの網を洗うことにした。アマゾンプライムで『三島由紀夫vs東大全共闘』を流してほとんど音だけ聞きながら。引っ越してきてからいちども洗っていなかったので油と埃とヤニでできた泥のようなもので網の目が詰まりかけている。タワシを出してきて、シンクのなかでひととおりこすって洗剤を行き渡らせて、しばらく置いてお湯をかけて、また洗剤をつけてこすって残った汚れを浮かせてこんどは水で流しながらこする。三島は偉いなあと思いながら。同時になんでこんなに総体として滑稽なんだろうと思いながら。パネルがふたつに分かれているのでこれを繰り返す。本当はレンジフード全体を洗いたいけど、踏み台に立って頭を突っ込んで作業をする元気はないのでまたこんど。どんどんしんどくなってきて、晩ご飯を食べて余っていたカロナールを2錠飲んで寝た。ぐっしょり汗をかいて目が覚めて、布団を剥がして寝返りを打つとさっきまで横顔が当たっていたところが濡れて枕が冷たくなっていた。夜中にまた起きるとすっかり元気になって、コーヒーを入れて朝まで本を読んだ(これから寝る)。

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カテゴリー: 日記