日記の続き#1

横浜駅の高速バスターミナルの待合に座っていると、名前を呼ばれた。付いてきてくれと言われて付いていくとビルの外に20人ほど並んでいる。声をかけてきた人と同じ黄色いベストを着た人が引率の先生みたいに列を引っ張ってバスが停まっているところまで歩く。指定された席は独立した三列シートのいちばん前の真ん中。冷たいガラスに頭を付けて、カーテンの隙間から外を眺めたりするところを想像していたのに。正面に40インチくらいの大きさで見えていた景色も出発するとすぐにカーテンで遮られて、車内灯も消えて真っ暗になった。すっかり忘れていたが高速バスで楽しいのは昼行バスだけなのだ。夜行バスに初めて乗ったのは高校生のとき、当時付き合っていた人とその友達が東京にライブを聴きに行くと言って、ふたりだけだと心配だから付いてきてくれと頼まれたときだった。そのときも今思えばさんざんだった。まず岡山の倉敷から東京まで12時間もかかる。そのうえ4列シートだったので、とうぜん彼女と友達が並んで座り、通路を挟んで僕は知らんおっさんの隣だった。ぜんぜん眠れなかったが、帰り道——1泊もせずにまた12時間かけて帰ったのだ——のことは覚えていないので、さすがに疲れて寝たんだろう。