日記の続き#122

八月の30年——5歳

まだ5歳か、とも思うが、もう1997年かとも思う。研究領域に沿って言えば20世紀というひとつの大きなスパンがあって、その意味で21世紀はオマケのようなものなのだが、僕の半生から言えば反対に20世紀というのは純粋なモラトリアムのようなものだ。とはいえそこには何か固有の闘いがあったはずで、今となってはそれを思い出すことはできない。幼稚園で飼っていたハムスターはよくブロックの下敷きになって死んでいた。無謀にも幼稚園で飼われるハムスターほど憐れなものもないが、当時の僕がそのことについてどう感じていたのかはわからない。学芸会の演劇で白い綿のタイツを履かされたのがとても悲しかったのは覚えているが、それが何の役だったのかはわからない。たぶん当時もわかっていなかったのだろう。