日記の続き#130

八月の30年——13歳

午前4時前。上がってすぐ読むひとはどれくらいいるのだろうか。ともかくこんばんは。どんな夜をお過ごしでしょうか。ものすごく退屈な人が電車で向かいに座った人に頭のなかで話しかけるような、そういう退屈さにおいて話しかけています。13歳というと、ベタにうちには村上龍の『13歳のハローワーク』がありました。本書を読んだときのこれで終わり? という物足りなさへのひっかかりと、こんなものだろうと大人ぶって泰然としてみせる強がりとが同居した気持ちを覚えています。言い訳みたいに「暴力が好きな人」とか「エッチなことが好きな人」のための職種も紹介されていて、なんというか、こういう言い訳みたいな添え方もあるのだなと思ったように思います。「エッチなことが好きな人」のところの挿絵が、マネキンのスカートをめくって覗いている少年のイラストで、これにもまた配慮のための配慮のようなものを感じました。当時は目につく端から小説を読み漁り始めた時期でもあって、図書館で村上春樹の隣に同様にたくさん本が並んでいる村上龍を自然に手に取ることもあったのですが、運悪く『ストレンジ・デイズ』とか『イン・ザ・ミソスープ』とか胸くそ悪いだけでぜんぜん面白くない本にあたってしまい、『ハローワーク』のことも相俟って龍のことはだいぶあとになって『コインロッカー・ベイビーズ』を読むまでずっとたんなる悪ぶったおっさんというイメージでした。『ストレンジ・デイズ』の忘れがたく気持ち悪いシーンがあって、主人公の昔悪かったおっさんが髪を赤に染めたトラック運転手の若い女に去られるのですが、取り残された男がドアーズのテープを流しながら酒を飲んで「悪くない」と言うのです。僕は失恋を肴に酒を煽って染み入るようなおっさんには絶対ならないようにしようと心に決めました。それが何よりの13歳のハローワークだった、という話です。