日記の続き#132

八月の30年——15歳

折り返し。ここまで来ると思い出すことより何を書くか選ぶことのほうが難しくなるが、思い出すことにはたいてい自分をどう見せたいかという下心が入り込んでいる。まああんまり禁欲的になってもしょうがないとも思うので思いつくままに書く。友達のお調子者の大くんが唯一の生徒会長候補で、担任から彼はなったらなったで困ると思うから君が出てやってくれと頼まれて、僕もそうだろうと思ったので出ることにした。とはいえやったことと言えば別の友達に山の風景を描いてもらってそれをポスターとして掲示しただけだったのだが大くんも同じようにふざけていたら僕が通ってしまい、しかし僕は別の理由であんまり学校に行かなくなり、高校にも進学しないと言い出したので結構な騒ぎになった。最初に担任が、次は育休中の前年の担任が子供を連れて、最後は世話好きの友達の父親までもがかわるがわる家に説得にやってきた。毎晩のように寝室から母が泣くのが聞こえてくるし、父は何を思ったのか当時ちょうど流行っていたアンジェラ・アキの「十五の君へ」という歌の歌詞を書き写したものを渡してくるし(こんな恥ずかしいことってありますか)、彼女には振られるし、バイトをしようと思って新聞の営業所に電話したら親にチクられるし、同時に生徒会長として休めない日はいろいろやっていたわけで(イベントごと以外では部室の修繕案を通すために先生とPTA相手にプレゼンをしたのを覚えている)、今思えばせわしない年だった。最後は誰も説得してこなくなったが、母が泣きっぱなしなのがキツいのである夜彼女に高校にいくことにすると伝えた。僕も悔しくて泣いたが、お前に何ができるんだと思う。