日記の続き#143

八月の30年——26歳

『眼がスクリーンになるとき』が出る。なるべくいろんなところで刊行記念イベントがしたいと思っていて、夏のあいだに東京、横浜だけでなく、大阪、京都、金沢、福岡に行った。横国大のイベントでは同時期に刊行された『オーバー・ザ・シネマ』の面々のうち、平倉圭、三浦哲哉、石岡良治と座談会をした。3対1はさすがに分が悪いんじゃないかとも思ったがなんとかなった。折り悪く大雨で、夜の山を登ってキャンパスに来るのでみんな足下がびしょ濡れだった。自分が何を喋ったのかは覚えていないが、石岡さんが「理論」というのは貧者の武器なのだという話をしていたのが心に残った。今の時代誰でもいろんな情報にアクセスできるかのように思われているが、実のところ海外のジャーナルや博物館の資料などアクセスのハードルが高いものはたくさんあり、そういう状況で貧しい者が頼れる武器こそが理論なのだと。編集者がウェブ記事にしますと言っていたが文字起こしが送られてくることはなかった。よくある話だ。