日記の続き#144

八月の30年——27歳

学年で言えば博士の3年、年号で言えば2019年なのだが、そこから何かを思い出すことができない。プロフィールの活動一覧からその年にやったことを見てみても、仕事の内容より向こうにいる自分がどんな感じだったのかが見えてこない。本を出した後でいろんなところから執筆やインタビューの依頼がくるようになって、それが楽しかった時期だと思う。初めて文芸誌に自分の文章が載ったとき、表紙に町田康の名前があって、なぜか母が僕が中学生の頃町田を読んでいたのを覚えていて、あの頃読んでいた人と同じ雑誌に書いてすごいねと言われたことを覚えている。今思えばなんというか、「仕事」っぽいことがやれて嬉しかったんだと思うけど、わりと調子に乗っていたような気もする。だからダメというより、その頃の調子に乗った展望に比べれば1、2年ほど齟齬が生まれているようにも思うので申し訳ないなと思う。まあその齟齬のなかから日記も書くようになったわけで、わからないものだなと思うし、当時の僕もわからないものだなと思ってくれると思う。