日記の続き#158

大阪。国立国際美術館でトーク。楽屋として用意してくれた応接室には10脚ほどのソファが並んでいて、背中にリュックを置いてその前に座ったあとで、リュックを隣のソファに置いた。対談相手の福元さんが機材の確認に出ると部屋が静かになった。地下で、ネットもつながっていない。館長が入ってきて名刺を渡して出て行った。入ってきたときより出ていくときのほうが小さかった。そういう部屋なのだ。本番ではアンミカみたいに日々が充実していればあったことを書けばそれで済むかもしれないが、幸か不幸かそんな人間はごく少数なはずで、僕のような平凡な人間が毎日日記を書こうとするとあったことを書くだけでは済まないのだ、そしてその——イベントレスネスに対応した——それだけでは済まなさが、日々の出来事の平面と書かれる日記の平面のあいだにもつれをもたらすのだという話をしたりした。それにしても日記を書いていたら美術館に呼ばれて日記について喋るというのは何なのか。聞きに来てくれた多賀宮さんとご飯を食べに行って、バーに行ったり(ノンアルコールドリンクがたくさんあるお店にしてくれた)、深夜に開いている喫茶店に行ったりしてたくさん喋った。喫茶店に文芸同人誌が置いてあって、統合失調症の人の日記が載っていた。