日記の続き#180

まいばすけっとに入るとカートを押しながらおばあさんが大声で「まいばすけっと売れない商店街の合い言葉」と繰り返しながら入ってきて、僕に「おーい売れない商店街のぼくちゃん」と言って、無視すると店員に「いらっしゃいました売れない商店街」と言っていた。狂った言葉をぶつけられると独特の疲労感がある。書店で働いていたときに明らかに挙動がおかしい若い男がカウンターに来て、後輩が対応していたので引き取ると「なんでずっと舌ぺろぺろしてるの?」と言ってくるので引っ張って店の外まで出たこともあったし、大阪で街を歩いていると後ろからおじさんに声をかけられて「キダタローの息子やろ」と言ってしばらくつきまとわれたこともある。彼らの言葉には言葉の威力があまりにダイレクトに宿っていて、憔悴した容疑者が冤罪を自白させられるような気持ちになる。話にならないというより、話にしてはいけない話を前に自分を保つのにはたいへんな努力がいる。