日記の続き#198

京橋のギャラリーでトークの日。昼過ぎに日本橋まで出て、あらかじめ調べておいた高島屋のメガネ屋でメガネを買った。すぐ持って帰れるものだと思ったら、2−3週間後にデンマークから届くらしい。建設中の戸田建設の新社屋の隣にある小さな建物のなかにギャラリーがあって、今回の佐々木香輔さんの展示は新社屋で本格的に始まるらしいアート事業の一環として作られた賞の受賞者としての個展で、そこに僕が対談相手として呼ばれた。ギャラリーに入るとマスクをした人から次々と名刺を渡されて、顔と照合できないので純粋名刺だなと思った。初対面の人との対談は久しぶりで、やはり「理論的解説」を求められたときにどこまで「身売り」するかが難しい判断だなと思い、正直にそういう話をしたうえで話せたのでよかった。こちらは作家本人としてはトリビアルなものだと思っている技術的な工夫やトラブルから話を広げたいし、あちらはすでに出来上がったものに対する、僕としてはまったく頭を使わなくてもできる言説的な拡張を求めているわけで、いままでそういうすれ違いに対してその場で明示的に投げかけるということをしてこなかったのだが、変なサービス精神を発揮して後で悶々とするくらいならその場で言ったほうがいいのだ。写真展ということもあるからか、普段僕が接するの現代美術の人とは微妙に客層が違っている感じがして、なんだか可能世界に紛れ込んだみたいで、自分がどういう「含み」の共有された世界に生きているか確認できたのもよかった。打ち上げに来た佐々木さんの友達が面白い人で、分厚いノートにトークのメモを縦書きでバラバラと書いていて、その席で僕がAdobeソフトの歴史的研究が必要だと思うという話をしているとページの真ん中に縦書きで「Adobe一揆」と書いていて、ノートの使い方として参考になった。