日記の続き#200

アパートの向かいのまいばすけっとに煙草を買いに行って、ハイライトメンソールと言うと、年齢確認できるものはありますかと聞かれて、いや、いま携帯しか持っていないんでと言うと、年齢確認できるものがないとお出しできませんと言われ、でも僕ここで毎日のように買ってるんですけどと言うと、でも年齢確認できないと、と言われ、そうですかと言って出て行った。「僕は平成4年6月4日生まれです。何歳かパッと言えますか。29歳です。僕は29歳なんですよ。29歳の人に免許証を出せと言うのはあまりに馬鹿げていませんか」とか「僕はそこのアパートに住んでるんです。財布を取りに行くのに3分もかかりません。こんな嘘をついてもしょうがない。それで僕が取って戻ってきて、確認して買っても、誰もいい思いはしません。僕は面倒だし、あなたも一度聞いてしまって引くに引けなくなってるだけでしょう」とか言葉が湧いてくる。財布を手に戻るとその人がああ取ってきてくださったんですね、たいへん申し訳ございませんでした、平成4年ですね、申し訳ございませんとしきりに謝っていて、やっぱり誰もいい思いをしないんだと思った。しかし彼女も、いくら顔半分がマスクで隠れていて平日の昼間から部屋着で煙草を買いにくる若者が珍しいからと言って、本当に僕が未成年だと思ったわけでもないだろう。それは口を突いて出たのだ。法が喋る。法の前では説得も謝罪もあまりに虚しい。その虚しさがまた虚しい言葉を呼ぶ。そうしてひとは傷つく。そういう順番だ。(2021年11月8日