日記の続き#246

夕方、くぬぎ屋のワンタンスープを食べる。鶏のスープに粗く挽いた肉だけのワンタンと肉とエビが入ったワンタンが3つずつ、明るい緑のチンゲン菜、刻んだ白ネギが浮かんでいる。ラジオから氣志團の新曲と、坂本龍一の「千のナイフ」をサンダーキャットがカバーした曲が流れてくる。それをiPhoneのシャザムで検索してライブラリに入れて、店を出て歩きながら聴きなおした。

関内のルノアールで作業をしていると、気づくと音楽が止んで空調の音が奇妙に籠もって聞こえる。音楽を再生しようとしてもiPhoneの側が受け付けず、かといってブルートゥースが切れているわけでもない。諦めて店を出ようと精算をして店の外にあるビルのトイレに行くと、くぐもった囁き声と、ときおり鼻をすするような音が聞こえてきた。店の客の何かと混線しているのだろうか。エレベーターで1階に降りると、廊下が暗く、出入り口のシャッターが閉まっている。ビルの開館時間は過ぎていて、ルノアールだけが開いているのだ。エレベーターに戻ってまたドアが開くと、なぜか何かの操作盤が並ぶ地下に降りていて作業着を着た男が乗り込んでくる。あいかわらずイヤホンからは遠くの声が聞こえている。男が1階で降りて僕はもといた2階で降りて、ルノアールの中を突っ切って店の正面の階段からやっと外に出た。異音を振り払うように歩いていると、その音の一部が歩行音とゆるやかに同期していることに気づいた。ノイズのその部分は左耳だけから流れている。右耳を取って振ってみるとその音が強くなる。どうやら外音処理の何かがおかしくなって、右耳で拾った音が左耳から流れているようだ。どこかにある何かと混線しているのかと思ったら、まさか左右の耳で混線していたとは。そのまま逆さ眼鏡のようになったイヤホンで街を歩いて帰って、イヤホンのソフトをアップデートしたら直った。それにしても怖かった。そしてイヤホンの分際でアップデートを要求するようになるとは。