日記の続き#279

『それから』に続いて『門』をオーディブルで聴いている。声優が変わって、女性の台詞を林原めぐみ風のコケティッシュな声の声優が読むので最初はうろたえたが、聴いているうちに慣れてしまった。聴きながらやよい軒で肉野菜炒めを食べて馬車道のサモアールまでまっすぐに歩いて行く。「そうすけ」と「およね」の夫婦は、叔父から押しつけられるような格好で夫の年の離れた弟の「ころく」を家で預かることになる。「六畳」と呼ばれる部屋をあてがうことになり、「ころく」が家に来るまでの数日間に一章が割かれている。六畳に置かれた鏡台の前に「およね」が座って、「そうすけ」の洋服にブラシをかけている。ブラシの音が止んでも「およね」が出てこないので、「そうすけ」が六畳に見に行くと、彼女は泣いたあとのような声で「はい」と答える。「そうすけ」は空元気を出して昔の話をしたり、「どうですか、世の中は」と言ったりする。すでに何かが起こってしまって、これから何かが起こるまでの宙づりの時間。『それから』も『門』もまったく自分のことのように思える。いま聴けて(読めて)よかった。作業の帰りにまた聴きながら歩いて、カレイと菜の花と生姜を買って帰って、カレイの煮付けと菜の花のおひたしを作った。