日記の続き#324

朝、新幹線で名古屋に向かう。豊田市美術館で開催される「ねこのほそ道」展の内覧会にささけんさんと五月女さんに誘ってもらって見に行く。豊田は雨。駅前のデパートのマツモトキヨシで折りたたみ傘を買って歩く。それぞれの個展がそれぞれ大きい空間に連なっているような展示で、「ねこ」はテーマやコンセプトというよりある種の方便というか、エンブレムのようなものなのだが、それがかえって作家が好きにやれる——主に日本の中堅作家が集まったこの規模のグループ展が美術館でできるというのも、そうだったよなと思う——余地を作っていると思った。とくに大田黒衣美の作品が気になった。ポケットティッシュからベロのように出た次の1枚の、その出た部分に絵が描かれている。久しぶりに会うほとんどの人がはじめ僕が僕だと気づかず、それはまず髪を短くしたからだと思うのだが、それに加えて最後に会って以降その素直な延長で僕のアバターみたいなものを投影しながら日記を読んでいて、実際の僕がかえって現実味に欠ける(あるいは思ったよりリアルである)というところもあるのではないかと思う。打ち上げ。分厚い上着の人が集まって空間がぎっしりする。ウエダさんという五月女さんの予備校時代の先生は、どこかでもらった稚魚を育てたらそれがウナギで、もう25年も飼っているらしかった。彼がかつてしていた製本の仕事の話をしていて、100枚の紙の厚さがわかるようになったが、結局数えなきゃいけないんだと言っていた。だいたい100枚が身体化されること。結局数えなきゃいけないこと。