日記の続き#332

また煙草が値上がりした。僕が吸っているハイライトメンソールは490円から530円に。喫煙者は禁煙化と値上げの挟み撃ちをくらい続けているわけで、なんとかならないものかと思う。とはいえ近所には煙草を吸いながら作業ができるお店もたくさんあるし、たくさん灰皿が置いてあって路上で吸っている人も多い。イセザキモール周辺を喫煙特区と呼ぶことにしよう。スローガンは「JTになんか任せてられるか!」にしよう。煙草を吸うのにいい人である必要なんてないのだ。

スパムとミームの対話篇」が公開された。柄にもなくアジテーション的なことをしたらミームになるな、スパムになれ!というなんだかよくわからないことを口走っているのだけど、一点突破ということではなく僕としてはこれまで書いたもの、これから書きたいものとの関係のなかでわりとシステマティックに考えている。というか、ひとりの人間が書く以上ある程度勝手にそうなる。

とにかく読んでほしいのだけど、この文章の実存的裏話みたいなものをすると、やっぱり人生はスパムになったりスパムのリンクを踏んだりすることでしか転がっていかないものだと思う。たとえば僕は岡山から大阪に出て6年間住んでいたけど、まったく関西弁というものを話さず、むしろ大阪に住むことによって「標準語」で喋るようになった。最初個人指導の塾でバイトをしていて、生徒と話すときに岡山弁が出ると不思議な顔をされて恥ずかしかった。それでですますの標準語で喋るようになって、大学には友達がおらずタメ口で喋る機会が生活からなくなり、いまでもタメ口ってどうやって喋ったらいいのかよくわからない。僕の話し言葉は書き言葉から逆照射して人工的にコントロールされたもので、最近はもう頭のなかの言葉も推敲しているみたいになって内語からも岡山弁が消え去りつつある。

多かれ少なかれこういう言語トラブルは誰しも抱えているものだと思う。標準語自体が人工的なものだというのはよく言われる話だけど、ものを書くということとスパム的な標準語でミームに揺さぶりをかけるということは切っても切り離せないことだと思う(村上春樹の逐語訳文体)。「マイナー文学とは、マイナー言語の文学ではなく、メジャー言語のなかで作るマイナー性の文学なのだ」とドゥルーズ゠ガタリは『カフカ』で言っている。「標準語」の引用符で書くこと。それがスパムになることだと思う。(2021年10月1日