日記の続き#350

デリーロの『ホワイトノイズ』を読み終わった。すでに自分の文体に影響が出ているのを感じるくらいで(よくない結果を生みそうだが、ともかく)、読めてよかったのだが、訳者あとがきが酷くてがっかりしてしまった。いったいこの作品のどこに、現代の災禍にわれわれは他者と手を取り合って立ち向かわなければならないという「巨大なメッセージ」なんて書いてあるのか。こういう、たんに話を終わらせるためにヒューマニズムを持ち出すことをこそこの作品は皮肉っているのではないか。そうでなければ最後の場面で修道女が主人公に言う、私たちが信じていなければあなたたちは安心して不信を表明できないから信じるふりをしているのだという言葉は、何に向けられた言葉なのか。たぶん、本当に、訳者はそろそろ話を切り上げねばならないと思ったからああいうことを書いたんだと思う。ヒューマニズムはもうこれ以上話をしたくないという合図だ。小説はそのあとに始まる。