5月24日

家で撮影。写真家の金川さん、デザイナーの須山さん、編集者の吉住さんが朝10時くらいに来て、妻を紹介してコーヒーを出す。天気は明るい曇りで、南の窓から差す光だけで撮影できる。金川さんの手際がよくて撮影自体は一時間半ほどで終わって、この街のことを紹介しながら龍鳳まで歩いて昼食を食べにいく。家の周りのカラスとネズミとスナックのこと、横浜橋商店街のこと、イセザキモールのこと。日記を読んでいても僕がこういう街に住んでいるのは意外らしく、街のことを書くのは本当に難しいのだと話す。龍鳳は待たずに入れて、丸いテーブルで空心菜炒めや海老の包み揚げ、鴨の薬膳スープをみんなで分けながら食べる。家に戻りながら吉住さんと『非美学』最終ゲラの未解決事項である「本書」問題について話す。つまり、「本書」が『非美学』を指す場合と直前に言及した本を指す場合とがあって、僕としてはそれぞれ文脈から明白にわかるし、いいじゃないかと思っているのだが、吉住さんや校正・校閲チームのひとは一瞬迷うので言葉を分けたほうがいいと思っている。たぶん問題は僕のクセで、本を主語にしがちなんですよねと言うとなるほどたしかにという空気になって、個々になるべく自然なかたちで修正したりしなかったりしますと言う。英語の問題で代名詞の指示対象を探すようなちょっとした負荷はむしろあったほうがいいようにも思うのだが、どうなのだろうか。吉住さんは金川さんを車で送って、須山さんは電車で帰る感じだったのだが、まだ吉住さんと打ち合わせることがあったこと、金川さんの個展会場に送ること、須山さんが帰るのもその方角であることもあり、5人みんなで車に乗って恵比寿まで金川さんの個展を見に行くことにした。関内から高速に乗って、50分ほどで会場に着く。「祈り/長崎」という展示で、文字通り祈りと長崎の写真が並んでおり、その看板のいつわりのなさだけでも、そうだよなと安心して見られる展示だった。逆に言えば、いま展示を見に行くことはそれくらい変な緊張を強いられているのだ。ギャラリーのスタッフに記念写真を撮ってもらって、良い一日だったねと言いながら別れて、妻と横浜に帰った。

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カテゴリー: 日記