昨夜2時頃、コンビニに夜食を買いに出るとアパートの目の前の車道のど真ん中で男がヨガの亀のポーズのように、あぐらをかいて突っ伏しており、酔っ払いだと思う。黒い服なので下手をすれば気づかず車に轢かれてしまうのではないか、と思いながら、もうコンビニに入っていた。
目が覚めて移動するか、誰かが動かすかしていてほしく、ちょっとわざとゆっくり買い物をして帰ったがそのまま座っており、諦めて「大丈夫ですか!!動けますか!!」と精一杯大きい声で話しかけた。ぐう、といういびきと声の中間のような返事はあるが、動かないし、下手に動かしていいものかもわからない。向こうからおじさんがやってきて一緒に話しかけてくれた。
警察に電話。事件ですか事故ですかという問いは聞こえなかったふりをして、車道のど真ん中で酔っ払いが寝ていると、住所を伝える。おじさんは男の肩を引っ張って起こして、自分の脚を背もたれのようにして支えていた。ばらばらと、ここが僕んちなんですよ、とか、南区の端っこだから遅いんだよ、と話す。たしかにパトカーが遅い、というか、パトカーどころか人も車もまったく通らず、われわれはいったい何を見守り何を待っているのか、ゴドー的な虚無から目をそらすように、ちょっとあの角まで見てきますとうろちょろしたりする。
パトカーから2人の警官が降りてきて、ひとりが即座に酔っ払いを抱え上げどこかに行き、もうひとりが電話をした僕に身分証はあるかと訊いた。スマホしか持っていないと言うとメモ帳を出して、ベストに着けられたライトでそれを照らして、僕の名前を書き留めた。フクオタクミ。幸福の福、尾っぽの尾、師匠の匠。おじさんは電話をしていないので何も訊かれなかった。そこで会社をやっているので、と言って去った。部屋に上がって、たくさん水滴のついたペットボトルを冷蔵庫にしまった。