10月24日

大前粟生さんに誘われて上野公園でピクニック。誰でも来ていいと募ったら僕らのほかに6人集まった。駅に着くと小雨が降っていて、国際子ども図書館は空いているだろうということで、そのなかのカフェでお茶をする。館内で日本の児童書の歴史を辿る展示を見る。展示されている本をそのまま閲覧できて、ふと石井桃子の『ノンちゃん雲に乗る』を手に取ると、冒頭で語り手がノンちゃんの人柄を紹介しており、いまの小説にないのは「報告」なのだなと思う。もともとノヴェルはニュースでもあったわけで。そうするとホラー小説の流行も、報告というスタンスが取りやすいからかもしれない。最近の小説は一行目から「世界でござい」という感じで読む気が失せる。ホームズのワトソンやギャツビーのニックみたいに報告者を作中人物にするか、ノンちゃんやカラマーゾフのように筆者(とされる語り手)の前口上を入れるか、いろいろかたちはあるが、読者が読者でいられる報告の気楽さみたいなものがあると思う。その点最近大前さんは日記形式の小説を書いているが、それもそういうところがあるのかもしれない。

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カテゴリー: 日記