8月9日

 低気圧で一日中頭が痛かった。後頭部が濡れた段ボールのように重く、画面を見ると視神経が引き攣るように痛い。こないだ本屋で買ってみたドン・ウィンズロウの『失踪』を手に取る。たまにこういうジャンル小説が読みたくなる。夜中までかけて一息で読んでしまった。主人公の刑事はアメリカ中部の地方都市で誘拐された少女を追ううちに、ニューヨークの富豪たちの闇に飛び込むことになる。『True Detective』とかそういうよくできた1シーズン完結のクライム・サスペンスのような引き込みもあり、チャンドラーのマーロウものやピンチョンの小説のような細部が錯綜しネタと伏線の境界が曖昧になるような濃密さもある。名前も知らない書き手だったけどすごい人だ(実際すごい人のようだ)。職業的・行政的なセクターの境界、州境、人種、経済的階層、そういうそれぞれに差異を抱えた異質なカテゴリーを跨ぎながら国道を走り、電話をかけ、銃を撃つアメリカ的な物語の強さを改めて感じた。

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カテゴリー: 日記