2月28日

昨日はなんだか暗い日記になってしまったが、それは、朝まで作業をしていて、もう眠いのだが横になってもいろいろ考えてしまい眠れず、眠れないストレスで胃が痛くなってきて、結局昼前になってやっと眠れて、夕方に起きて落ち込んだ気持ちのまま書いたからだと思う。また朝まで書いていたが、やっと半分くらいまで来た。あとひと晩かふた晩でなんとかなると思う。

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2月27日

いま書いている連載原稿は、博論本の初稿を終えて初めて書く原稿ということになる。それで、当初は、降りた肩の荷の重さを測る軽々とした執筆を味わえるのだろうと思っていた。実際、弾んだボールがその頂点で存在しない一瞬のあいだ停止するような、それを自由と呼ぶのであればこれが自由であるような気もする状態にあるのだが、それが嬉しいかというとそういうこともあまりなく、あいかわらず書くのは苦しい。頭のなかを渦巻く言葉の切れ端に運び去られてしまいそうで、かえってどんどん無口になっていく。布団の中で、大袈裟ではなく、書かないとおかしくなってしまうだろうと思う。

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2月26日

The sun is gone
But I have a light
The day is done
But I’m having fun
I think I’m dumb
Or maybe just happy
——Nirvana, Dumb

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2月25日

朝が来て布団に入って、書きたいこと触れたいことはたくさんあるのに、それを問いと答えのあいだに置こうとするから進まないのだと思い当たった。だとすると、問いも答えもない、あるいはあわよくば、それらが僕自身よくわかっていないままに文章の虚焦点をなすような、もはや論とも呼べないものを書くことになる。そんなことをやっていいのだろうか。しかしこの連載が「もっとも自由な散文」として批評を実践することを宣言して始まった以上、それを引き受けるのはむしろ必然的なことなのかもしれない。それでもまだ読めるものを僕は書けるのだろうか。バカだと思われるならまだしも、「文体実践」に逃げたと思われるのも、かえってそれで変な客がつくのも癪だ。でも日記にはもともと問いも答えもない。よっぽどまた起きて書きだそうかと思ったが、震えとともにそのまま寝た。

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2月24日

珈琲館に行くと3月いっぱいで店の名前が変わるというパネルが出ている。珈琲館グループと折り合いがつかなくなり脱退することになったらしい。くしくも僕がフリーランスになるのと同じタイミングで、横浜に来てから7年間ずっとお世話になっているこの店も独立するわけだ。マスターがほかの常連と話しているのを聞くと、禁煙にしたいという珈琲館側の方針もあったらしい(事実近所にもうひとつある伊勢佐木町店は3年ほど前に禁煙化した)。この店を禁煙にするなんてとんでもない。客の大半が喫煙者か、煙なんか気にしない近所の老人で、それでどの時間帯も席が埋まっているのだ。声をかけるタイミングがあれば応援しますと言おうと思ったが、レジ打ちはバイトのひとがしてくれたので言わなかった。僕も頑張ろう。

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2月23日

横浜駅で整体。早く着いてジョイナスの大戸屋で昼ご飯を食べる。レストラン街の通路に面したカウンター席で、ガラス越しに通行人を見、見られながらからあげ定食を食べる。まだ時間があるので西口のドトールに入ったが、休日で満席だったので、オフィス街で人が少ないであろうSTスポットのほうへ雨で暗い道を歩いて行く。いつまで経っても横浜駅周辺は好きになれない。結局入った別のドトールでも残り時間が気になって仕事が進まず、さっき渡っていないはずのなんだかよくわからない川を渡りなおして整体に行った。仰向けになって目にタオルをかぶせられて首のマッサージをされているときに、急な話なんですけどと、3月いっぱいで藤沢店に転勤になったという話をされる。口だけ出たまま寂しいですねと言う。店を出るとまたカフェ難民になり、考えるのが面倒なので同じドトールに戻って作業をした。連載の原稿は少ししか進まず、途中で諦めて論集に入れたい記事をリストアップした。8時に閉店になり、駅に戻っていると9時まで開いているベローチェがあり、悔しかったのでそこで原稿の続きを書いた。喫煙席ではないがブースがあってそのぶんドトールより広さにゆとりがあって、最初からこの店でよかったのだと思った。

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2月22日

初稿校正ゲラが届く。校正資料がA4用紙100枚くらいついていて、ゲラにはびっしり指摘が書き込まれている。ちょっと読み進めるたびに目が拡散する。指摘を確認するだけで2000個くらい決断を下すことになるだろう。いちどひととおり表記・センテンスレベルの修正を済ませてからでないと、流れ・パラグラフレベルで再検討することはできなさそうだ。有隣堂で大きめのポストイットを買って、即答できないものについて帰ってこれるよう目印をつけておくことにする。

夕飯を食べて眠たくなったが、ジムに行くことにする。着替えてストレッチエリアに入ると、男が3人ヨガマットを取り出して三角形に並べている。丸く鍛えられた体で仰向けになって、真ん中に置かれたスマホの動画に合わせて腹筋のワークアウトをしている姿は赤ん坊のようだった。帰りは雨で、自転車に乗れないので傘を差して誰もいないイセザキモールを歩いて帰った。

夜中ふと、聞き書き、というが、書くことを聴くことにすり替えるなよと腹が立ってきた。生活史。生活がヒストリーになって嬉しいかね。

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2月21日

「2004年、北側の石もはずし、ついに中央に石槨が現れた。地表に4枚の大きな板石を並べて長方形の空間が作られている。141×72センチと狭いが、足を曲げたいわゆる屈葬であれば大人の遺体でも入れられる。我々は期待に胸をときめかせながら蓋石をはずし、中の土を少しずつ掘っていったが、何も出てこない。それでもあきらめきれずに、すべての石をはずした後、その下に軟らかい土層がみとめられたので掘り下げたところ、ぽっかりと空間が開き、なんと、新しいふかふかの草、靴の紐、軍手が出てきたではないか。そこはタルバガンというプレーリードッグのような小動物の巣だったのである。」
林俊夫『スキタイと匈奴——遊牧の文明』講談社学術文庫

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2月20日

春から始めようと思っている「Philoshopy」のために3年ぶりにウェブサイトを作る。ドメインを取得して、このサイトと同じサーバーに紐付けて、wordpressをインストールして構造とデザインを考える。3年ぶりですべての手順を忘れていたので、SDNとかFTPとかSSLとか、なんだかわからないままQ&Aとウェブ検索の知識をつぎはぎしてやっと見た目のレベルでそのまま操作できるwordpressの管理画面にたどり着く。こちらのサイトで使っているプラグインを確認するために開くと真っ白な画面が出てきて、ブラウザとデバイスを変えても真っ白なので、何かの手違いでこちらのデータがサーバーから消し飛んだのかと僕の頭も真っ白になった。自分は何をしたのか。このサイトは戻ってくるのか。レンタルサーバーの管理画面でさっき、このサイトのPHPのバージョンが7.4で新しいサイトが8.2になっており、PHPは最新にしておくべしという情報を見てアップデートしたのがよくなかったのかもしれない。「wordpress 真っ白 PHP」と検索すると、テンプレートによっては対応していないバージョンがありそれで真っ白になるようで、結局PHPが何なのかはわからないまま、戻すとすぐに直った。

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2月19日

夜から神保町で講座。いつも準備をするドトールにいると、細いおばさんがトレーを机に置いた弾みでアイスコーヒーをすべて床にこぼし、その隣に座っている別のおばさんの席の床にまで広がった。ふたりめのおばさんは即座に立ち上がり、必死に謝る最初のおばさんをなだめながら食器返却棚に布巾を探しに行き、無かったので店員を呼んでくると1階に降りていった。そのあいだ細いおばさんは紙ナプキンで床に広がった氷を集めている。ふたりの席は壁を背にしてまっすぐこちらを向いており、それはとても演劇的な場面に見えた。上がってきた店員は事情を確認してもういちど降り、モップと新たなアイスコーヒーのグラスをそれぞれの手に持って上がってくる。その様子があまりに危なっかしかったので、印象が演劇的なものに書き換えられたのかもしれない。気付くとふたりめのおばさんのほうはいなくなっており、細いおばさんは肘をついて、机に寝かせた携帯を真上からのぞき込むようにうなだれて見ていた。

夜中、いちど寝たのだがすぐ起きてしまう。自分が関わる業界はどこも他所から調達したもので自分を隠すインチキばかりだと怒りが湧いてきて、僕は本当のことだけを書くために日記をやっているんだと気付いた。かなり不器用なやりかただが。

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