6月11日

 めずらしく12時過ぎには眠たくなって、今寝れば朝に起きられるかもしれないと思って寝たのだけど、体が昼寝と勘違いしたのか1時間ほどで眼が覚めた。手持ち無沙汰になって日記を書いている。夢を見た。大昔に住んでいた団地——われわれはそれを「住宅」と呼んでいた——にいる。夜で、低いところに星がたくさん見える。部屋のドアを開けると入れ違いに兄が出かけるところで、こんな夜中にどこに行くんだろうと思う。寝ているのと喋っているのとが重ね合わされたようなかたちで両親が寝室にいる。居間のこたつで彼女がサラダ味のサッポロポテトをつまんでいて、リクライニングを倒した座椅子に寝そべって狭いこたつに足を突っ込む。みすず書房からフロイトとウィトゲンシュタインの中間の人の新刊が出ていて、「その日の仕事を別のかたちで保存して食べるために毎日料理を作る」と書いてある。それは彼がしていた子供向けの授業を本にしたもので、こんなものがあったのかと思う。

 とりあえず書いてみたけどこれはほとんどボツだなと思って寝なおした。別の話をしよう。街には悪そうな人がたくさんいる。というか、昔悪かったけど今はもうくたびれている感じの人がたくさんいる。悪というとどうしてか一様に悪い人が集まっているのを想像してしまうので、悪のあとでばらばらと様々に人がくたびれているのを見るとなんだか元気になる。連れの東南アジア系の女性にやり込められている人もいれば、Tシャツの袖から和彫りをのぞかせて道端に座っている人もいる。そこには生活の匂いがあって、そういうレベルでの悪の多様性に触れることは陰謀論への免疫になるのかもしれないと思った。

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カテゴリー: 日記