4月21日

 いつもの珈琲館。ライターを忘れたのでマッチを借りた。常連らしきおばあさんを、ひとりで歩いて来られるだけ元気じゃないですかと言いながら、店長が手を取って立ち上がるのを助けている。もう片方の手で彼女は棒の部分に蛍光テープを貼った杖を持っていた。先が4つ又に分かれていて、自立するようになっている。自立する杖。とても哲学的なオブジェだ。いつか何かの名前に使いたい。自立する杖が教えてくれるのは、先端が分かれていない普通の杖は自立しないということだ。人を支えるためのものが自立しないというのは考えてみれば不思議な感じがするし、杖にとって自立するしないがオプショナルであるというのはもっと不思議だ。そして杖の自立があってもなくてもいいのなら人間の自立はなおさらじゃないかという気がしてくる。しかしいろんな事情のもとにある個々人の生き様はともかく、哲学は自立する杖にならなきゃいけないと思う。何かを支えることもできるし、ほっとかれても気にしない。

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カテゴリー: 日記