日記の続き#284

大和田俊と新宿のデカメロンに展示を見に行く。ご飯を食べるところを探していると歌舞伎町にもこんな店があるのかという素朴な定食屋があって、そこで生姜焼き定食を食べた。大和田さんが壁に貼ってある子供の絵を見て、これは何語ですかと店員に聞くと、ミャンマー語で、地元の子供らが来たときに描いていったのだと言った。大和田さんいわくなぜか知らないがミャンマー人が和食の店をやることはけっこうあるらしい。展示は村田冬実さんの個展で、会場で久しぶり——芸大で『アーギュメンツ#3』を買ってもらって以来だから6年ぶりくらい——に村田さんに会った。ビンゴゲームの紙の当たったところを折り込むように、対象の輪郭に沿って切り取った写真が折られ、伏せられた紙から対象が立ち上がっている。写されているのは人形やぬいぐるみで、ひとの家の窓に外に向かって置かれているものをガラス越しに撮ったものだということだった。伏せられた背景はかすかに反り返っていて(ロール紙に印刷したかららしい)、写真と同じ大きさの展示台の下から覗くと縁からカーテンの模様や室内の光が見える。人形はガラスのテクスチャーや外景の映り込みによってそれぞれにある種のエフェクトがかかって、それが不思議とどれも懐かしさの印象を与える。写真の隠喩だ、と思う。でも写真の隠喩をインスタレーション的に作ることより、それがすでに街路に露出していることを示していることが大事なのだと思う。1階のバーで村田さんと大和田さんとビリヤニやインドについて喋っていると村田さんの友達の作家も合流して、手巻き煙草の巻き方を教えてもらったり、それぞれ試している健康法を教え合ったりした。それほど親しくないひととそういう他愛のない話をしたのが楽しくて、それがものすごく久しぶりのことに思えた。大和田さんは結石が痛むらしく、情報番組の天気予報のように移動する痛みをそのつど報告していた。