日記の続き#312

起きて引用する日記を選んで、ワークショップの前半でするショートレクチャーのスライドを作る。参加者は今月初めから日記を書くことになっていたのだがすでに途切れている人が多く、これまでも日記を書いてはやめる人をたくさん見てきたので最初に僕なりの継続のコツを書くことにした。

  • 日記でなくでもそうなのだが、とくに日記は、ひとつのモチベーションで続けるのはとても難しいと思う。
  • たとえば「文章が上手くなりたい」から日記を始めるとして、まず「文章が上手い」というのは非常に抽象的なことで成長が実感できるようなものではない。あるいは「日々の出来事を記録したい」から始めるとしても、記録に値するものの少なさに幻滅するのがオチだろう(いちばん危険なのは他人の評価を求めること……)。
  • 日記を直線的な動機→結果で続けるのはほとんど不可能で、むしろ途切れたり分岐したりする思いなしの複線性そのものをドライブにしたほうがいい。
  • つまり、モチベーションを複数抱えておいて、飽きたらそのつどひとつ捨ててまたどこかでひとつ拾うようにするといいと思う。

それで、メインのテーマとして僕自身のモチベーションを5つに分けて話して、その輻輳性がどう日記の文章に跳ね返るのかということを話した。キーワードのひとつは「不埒さ」で、日記に生活上の効用があるとしたら生きていることそのもののうちにある不埒さが表現になることだと思う。後半のワークショップは思いのほか盛り上がったので安心した。通り一遍の自己紹介抜きにいきなり日記を交換して自分はこの言葉の並びを書くか(書けるか)という観点から10分かけて読んでもらった。自分が書くときの解像度で人の文章を読むことは滅多にないが、不思議なことにそうすると相手に自然な好意が生まれるようだった。