6月29日

地下鉄に乗ると、大きなリュックを席に置いてその隣に座っている人がおり、その振る舞いを警戒してさらにそのリュックの隣の席が空いており、これ幸いとそこに座った。リュックにはヘルプマークのタグがついており、彼はスマホのパズルゲームに集中していたと思ったら、今度はおそらくイヤホンから流れる音楽に合わせて人差し指を立てて上下させている。ときおり恨めしそうに彼を見る立ったままの乗客もいたが、さしあたり座ったほうがよさそうな人も、怒り出してトラブルになりそうな人もいないと判断して、いつのまにか自分が、彼とこの車両を守らなければならないのだという気持ちになっていることに気がついた。彼も僕も横浜駅で降りて、なんとなく後ろから様子を見ていると、彼はエスカレーターで律儀に空けられた右側のラインに立ち、歩いて上りたい人がつっかえていた。でもリュックのせいで座れなくなるのはそれほど混まない時間帯の4駅ほどのあいだだし、エスカレーターに至っては10秒にもならないほどのロスしか生まない。人よりちょっと寛いでいるということが、これだけ人をピリピリさせるのだということが怖くなった。彼は人よりちょっと寛いでいるだけなのだ。

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カテゴリー: 日記