11月18日

それぞれ1時間半くらいかけて移動して三つの場所に行き、都合7人の友人に会った。曳舟、向島、北千住、上井草、野方、初めて行くのに知っている小さな地名たち。

昼に家を出て、百頭さんの個展を見に行く。京急で浅草線に乗り入れて押上まで行って、そこから京成線に乗り換えて曳舟で降りる。歩いていると郵便局の名前に「向島」とあり、曳舟と向島が隣り合っていることを知る。たしかに、低層のアパートや商店、会社が並ぶ町並み越しに600メートル超のスカイツリーが見えるのは、戦後の街から見上げる東京タワーに比例してはいるのかもしれない。ギャラリーに入ると百頭さんがお茶を出してくれる。写真を見ていると黒嵜さんが来て、映像作品がある2階に上がっているときにこの建物が首塚に似ていることに気がつく。展示はすごく面白かった。都市の縁に点在するジャンクヤードにうずたかく積み上がる、いわば「分別以上、処理未満」の産業廃棄物が本来過渡的であるはずのその身分とは裏腹に、不気味に静かに写し取られている。自転車は自転車だけ、車のハンドルは車のハンドルだけである区画を満たし、鉄が錆びプラスチックが褪色するなか、ヤードを取り囲む銀や白の鋼板だけが風化を免れて直線的に立ちはだかる。写真はその平面性を強調するが、逆なのかもしれない。「分別都市」という言葉が思い浮かぶ。それは「サプライチェーン」や「リサイクル」という言葉が喚起する時間性の裏側にある。そしてそれはやはり写真の別名でもあるだろう。百頭さんはもう10年以上も毎週のように、Googleアース、ストリートビューで撮影地を探し、そこに行って写真を撮っているらしい(映像作品のひとつは、彼がPC上でストリートビューと現地で撮影した写真を往復する様子をキャプチャしたものだ)。それはすでに撮られている。「撮る」ということがここでは、さらにもっとずっと前から始まっている。そしてそこでは、拾い上げられた木彫りの大黒さま、サンタクロースやアニメキャラの置物がポーズを取っている。

黒嵜さんと友人宅に向かい、そこでお世話になっているふたりの編集者と会ってご飯をご馳走になって、帰ろうと思ったら乗り換えが間に合わず終電を逃して、大和田さんの家に泊まっている黒嵜さんにまた合流して、朝まで喋って帰った。

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カテゴリー: 日記