7月10日

 ほとんど義務感で読んでいる『刃牙』シリーズの最新刊をKindleで買って読んだ。シリーズ第三タイトルの『範馬刃牙』以降の定番で、刃牙の父であり「地上最強の生物」である範馬勇次郎とその時々のアメリカ大統領が友好条約を結ぶ場面が描かれる。極限まで鍛えられた個人の戦闘能力は一国の軍事力に匹敵するわけだ。もちろん機銃で撃たれれば勇次郎だって死ぬだろうが、作者の板垣が周到なのは「強さ」を肉体的な強度がどのように社会的権威に結びつくかという観点で描いているところ、つまり両者の「直接対決」が強さによって避けられるところで、テーブルに足を投げ出してソファに座る勇次郎と直立不動で震えている大統領が差し向かいで話す友好宣言の場面にはそれが最も如実に表れている。とはいえブッシュ、オバマ、トランプと折に触れて物語に挿入されてきたこの関係も、10年以上経ってさすがにマンネリ化してきている。今回出てくるバイデンのエピソードだけでなく主人公の刃牙が相撲取りと対戦する場面も使い古されたモチーフばかりだ。終わっているのに続いている。読まないと落ち着かないのはそれが確認できないからだろうか。

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カテゴリー: 日記