日記の続き#301

イセザキモールの脇にある、1階が焼肉屋で3階がタイマッサージ屋のビルの2階に入っている三番館という喫茶店に入る。席で煙草が吸えて、コーヒーも美味しい。愛想の良い店主は最近あまり見なくなった。今日も息子らしい男が店番をしている。向かいがハリウッドというパチンコ屋で、主な客は中国人のおばちゃんと年老いたヤクザだ。テーブルが狭く席どうしが近いので長時間の作業には向かないが、日記を書いてしばらく本を読むだけだからと思って入った。いちばん奥の、片側だけ壁に遮られて見えないボックス席の見える側に老人がふたり並んで座っていて、見えない奥の方から外国語訛りの女の声が聞こえる。ヤクザと世話をしている店の店長だろう。奥から出ててきた1万円札を老人が財布に入れた。会話のトーンは穏やかだ。ルイヴィトンのカーディガンを羽織った背中を向けた老人が語彙が少ないんだからね、あんまり喋らなくていいんだよと言うと、喋りすぎなんじゃなくて考えすぎなんだともう一方の老人が言った。女が考えたことを話しているのだと言うと笑いが起こった。しばらく本を読んで顔を上げるとその3人はいなくなっていて、テーブルに空のグラスが並んでいた。結局女の姿は見えないままだった。