日記の続き#314

昼の珈琲館は混んでいて、おばちゃん四人組、不動産の話をしているらしいおじさんふたり、このあたりが地元らしく近所のラーメン屋や喫茶店の昔話をしているおじさんふたりの話が四方から聞こえてくる。おばちゃんのひとりがシュレッダーのことを「入れるとゴミになるやつ」と言ったり、不動産おじさんが「ここがだいたい5メートル」と言ったり、地元おじさんが「地獄ラーメン」の話をしたりしている。とはいえわかるのはそれが日本語であるということくらいで会話の内容はぜんぜんわからない。字面だけ取り出せば母語話者どうしでもこれぐらいわからないのが野生の言葉で、人工知能の自然言語処理はそれを前提にした言葉へのアプローチと言えるのかもしれないと考えながら本を読んでいた。その背後では注意の外のテーブルの客がそこここで入れ替わっている。iPhoneのボイスメモを起動させて15分ほど録音して、帰ってから聞いてみたが誰が何の話をしているのかやっぱりわからなかった。ビリー・アイリッシュの「Your Power」のあとにトムトムクラブの「Genius of Love」をサンプリングしたヒップホップがかかっていたことはわかった。調べてみるとLattoというアーティストの曲だった。音楽のほうが多面的なのでトレースしやすい。