6月18日

北海道の国道で高速バスとトラックが正面衝突し、双方の運転手に加えバスの乗客3人が死亡したというニュースが流れてくる。バスの後方を走る自家用車のドライブレコーダーで撮影された動画が公開されている。視界を遮るもののない平原を貫くかすかなカーブの中腹で、車線を越えてトラックが迫り出してくる。撮影者の悲鳴とともにカメラ=車は停車する。衝突の勢いでトラックの荷台から飛び出してきた豚が奇妙なほど見やすく画面に収まっている。何頭かはその場に横たわり、何頭かは体を起こして歩き回っている。たった10秒ほどの動画だ。見えるが数えられない豚、見えないが数えられる人間。この動画がこんなにも痛ましいのは、これがある種の切り返しショットだからだと気付く。これはバスの向こう側に広がっているだろう光景の反映なのだ。豚は食肉処理場へ向かう途中だったらしく、どうせすぐ殺されるのだから豚がかわいそうと言うのは偽善だというコメントがついている。それはそうだろう。でも善がそれほど確かなら、誰がわざわざ偽善を言うだろう。

「一匹の鼠の断末魔、一頭の牛の屠殺が、思考のなかに現前したままであるのは、憐れみの情からではない。その現前は、人間と動物のあいだの交換ゾーンとしてあるのであって、そのゾーンにおいてこそ互いに何かが相手のなかに移行する。」
ドゥルーズ+ガタリ『哲学とは何か』

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カテゴリー: 日記