10月18日

授業。学生に自分の関心で選んでもらった論文をみんなで読んでから集まり、その学生が論文についての2000字のレビューを発表し、議論する。僕が論文から抽象的な構造とその重心を取り出し、ホワイトボードにマッピングする。その観点から論文のもったいないところ、レビューが論述の推移に引っ張られて構造的に把握できていないところを指摘する。僕が話すのはいつも、構造と量の話だ。こういう構造なのだからここがいちばん大事なことであるはずで、いちばん大事なことにいちばん多く文字が割かれていないのはおかしい、と。研究の形式性を、大事なことについて話すのを先送りにするために使ってしまうケースが多い。研究対象の背景、先行研究の整理、あり合わせの「理論」に基づいた中立的な分析、そして最後に反語的に投げかけるように、大事なことが問われる。本当はそこから出発するべきなのだ。だから文章は2回書かなければならない。

帰り道。新横浜から地下鉄に乗る。前に立った男がつり革を持つ手の肩に布のショルダーバックを提げていて、座っている僕の膝に付くか付かないかのところで揺れている。どうしてこんなにベルトが長いのか、歩きながら腿で弾いているのか、膝に付くとそのぶん鞄が軽くなり、それに相手が気付き、そのことに対してどう感じるか僕が考えなければならず、出来事が増えるので付かないでほしいと思った。

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カテゴリー: 日記