3月22日

朝、初稿ゲラの最後の確認。決め切れていなかったことが奇妙にも淡々と進んで、排水口に最後の水がふっと吸い込まれるようにあっけなく終わった。気が楽になったので中目黒に展示を見に行くことにして、打ち合わせ場所もそちらに変えてもらう。妻と一緒に出かけて青山|目黒に向かう。千葉さんが作品を出している「具ささ」を見て、向かいの喫茶店で編集者を待つ。煙草が吸える良い雰囲気の店で、店主のおばちゃんが客と元気よく話している。背の高い中学生はカナダ留学から帰ってきたところで、小さい頃からこの店に来ていたらしい。妻が買い物をするために店を出て、入れ替わりで編集者が到着する。中学生は友達と遊ぶ約束をしていたのを忘れていたと出て行って、あとで母親がタクシーでチャーハン代を払いに来た。こんどは店の電話が鳴って、19歳なのだが店で煙草を吸っていいかと聞いてきたらしい。しばらくしてその青年が入ってきて、僕の背中でおばちゃんがここは煙草が吸える店で、あんたが言わなきゃ年齢なんかわからないんだからと言って、彼は力なく返事をしていた。まだ世界に摩擦が存在することを確認するようにゲラを見終わった編集者と再校のための細かい決め事と広報・営業の方針について話して、彼と一緒にもういちど展示を見て、青山さんと3人ですこし世間話をして帰った。少なくとも、ゲラのぶん鞄は軽くなった。

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カテゴリー: 日記