5月13日

朝、二度も締め切りを延ばしてもらったのもあって、『非美学』再校ゲラを自分で出版社に持っていく。河出はさいきん神楽坂に移転したらしいが前の社屋を知らないので感慨もない。再校の最後はほとんど、一周目であとでもうちょっと整えたり補ったりしようとつけた付箋を、ただ外していくだけの作業だった。もういい。見たくない。でもなんだか悲しい。そういう気持ち。会議室で編集者に渡して、いくつか全体のチェック事項を伝えて、ビルを出た。神楽坂。何もない。本当に何もない。まずどこも煙草を吸えない。ドトールすらない。喫煙所マップのアプリを開くと、駅の反対側の入り口付近のファミマに喫煙ブースがあるということで、そこに行った。2階のイートインの脇にあるブースで一服して、たぶんここが神楽坂の上限なのだと思い、1階でサンドイッチとファミチキ、カフェラテを買ってそれを昼食にすることにした。店員は中南米系のおばちゃんで、名札に「サラダ」と書いてあって、ポイントカードはありますですかと丁寧に話していた。やはりここが上限なのだ。煙草を吸うと自動的にその街のいちばん優しい空間に行ける。実際、イートインで隣のおじいさんがアイスティーをこぼして、今度は「サビナ」という女性が片付けにきてくれた。帰るともう夕方で、いそいでフィロショピー初回のレジュメを準備した。2時間喋りっぱなしでへとへとになって、しかし頭が冴えて眠れそうになかったのでコーラを買いに出た。

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カテゴリー: 日記