2月18日

「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」のライブビューイングを見に、港北のイオンにある映画館に行く。ドームのチケットは外れ、近所の映画館は調べたときにはもう満席だった。いつも乗る市営地下鉄を横浜も新横浜も越えて北上する。センター北駅のまわりにはあまり見たことがないタイプの広がりがあり、渡り廊下でそのままイオンに繋がっている。フードコートのタコベルで腹ごしらえをする。初めて食べたのだが、ペラペラの小麦粉にぼろぼろのレタスと冷たいままのチーズ、スプーン2杯ほどの挽き肉が挟まっただけの味気ない食べ物だった。辛いソースがコーラで流し込むのにはちょうどいい。7階の映画館に向かってエスカレーターを登りながら、自分がライブの内容になんの期待もしていないことに気がついた。これはここ数年、仕事をしていないあいだの自分の耳を埋め、頭から言葉を追い払ってくれたラジオに対する、なにかのしるしみたいな行事なのだ。ドリンク売り場が大行列になっており、並んでいたら遅れそうなのでそのまま入場する。配信前の観客向けの映像でオードリーが遠慮なく声を出して笑ってほしいと言っており、「トゥース」のかけ声に会場は曖昧な反応を返していた。グラウンドまで満席になった東京ドームの映像に切り替わり、オープニングムービーが始まると同時に、涙が止まらなくなってしまった。ふたりで喋ってるだけ、その「だけ」を守るために、どれほどのウィットが必要だったのだろうか。

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2月17日

作業をしようと思って出かけて珈琲館に入って、パソコンを持っていないことに気がついた。とりあえず一本煙草を吸って、バッグに入っていた本を読む。それも一時間ほどで読み終えてしまって、しかたなく携帯のメモで連載原稿を書き始めた。LUUPの停車証明写真について書いた14日の日記をコピペして、Amazonが置き配をデフォルトの配送方法にしたのと同じ日(2020年3月23日)に小池都知事が会見で「ロックダウン」の可能性を示唆し、「イベントの自粛」とテレワークなどによる「働き方改革」を呼びかけたことを書く。これが今回の、映画で言うところのエスタブリッシング・ショットになる。うまくいきそうな気がする。

部屋の窓辺にタッパーに入った豆苗が育っている。2回続けて観葉植物を買ってはすぐ枯らしてしまった妻がスーパーで買ったものの根っこから育てていて、毎日水を入れ替えて窓辺に戻すので、そんなちゃんと陽に当てることもないと思うよと言ったのだが、今回はちゃんと芽がぐんぐん伸びている。

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2月16日

家を出て歩いていると、タイ人らしきおばちゃんが道の途中に自転車を停めて立ち尽くして電話をかけていた。ドン・キホーテのオリジナルブランドの大きな「ド」のロゴが入った、炊飯器の箱がその脇の地面に置かれていた。彼女はどこから来てどこへ行くのか。通り過ぎてしまうとその自転車にカゴがついていたのかもう思い出せなかった。電話と炊飯器は関係があるのか。自転車を停めるまで炊飯器はどこにあったのか。

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2月15日

昨日の日記を書いてこれはそのまま「言葉と物」の原稿に使えるなと思った。AmazonとLUUP、置き配写真の身近な話から、百頭たけしの写真やワリード・ベシュティの拡張された写真としての《FedEx》の話、クラウスにおける「写真的なもの」とインスタレーションの関係など、頭のなかでトピック出しをする。しばらく前から撮っている置き配写真のスクリーンショットを図版に入れるべきか考えていて、サイトに「置き配写真館」を作ってそのリンクを乗せればいいのだと思いつき、ページと投稿用のフォームを作って公開した。ぱっと思いついてすぐ何かできるときは調子が良いときだ。

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2月14日

ジムからの帰り道、もう電車もなく、いつも借りるシェアバイクのポートに行くと一台も残っていなかった。夜は関内から外へ退勤する人びとの流れで少なくなってしまう。ポートの向かいにLUUPのポートがあって、電動キックボードに初めて乗ってみることにした。ハンドルについているQRコードを読み込んで鍵を開け、苦労してスタンドを外す。乗って漕いでみても勢いがつかず、停まった状態からハンドルのレバーを回して走るのだと気付く。タイヤが小さく、ボードが地上から10センチほどしか浮いていない。自転車のようにふらつきをハンドルでフォローするということができないので、とにかく両足を板に乗せたまま加速するしかない。あっというまに時速20キロ出る。夜中で車が少ないので段差のない車道を大通り公園に沿ってまっすぐ帰れたが、ちょっと込み入った歩道や車が多い車道を走るようなものではない。マンションとマンションのあいだの真っ暗な隙間のポートに停める。アプリを開いて乗車終了のボタンをタップすると、画面がカメラに切り替わる。さっき停めたほうに向けて真っ暗な枠の下にあるシャッターを押すと、フラッシュがたかれ一瞬車体が浮かび上がり、返却完了の画面に自動で切り替わる。歩いて帰りながら、その不気味な写真はAmazonから送られる置き配完了の写真とまったく同じ仕組みであることに思い至った。移動していると思ったら運んでいたのだ。

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2月13日

こないだから自分でレクチャーを売る企画をぼんやり考えていて、「Philosophy, for here or to go? 哲学を持ち帰るには」というフレーズを思い浮かぶとともにいろんな具体的なアイデアが出てきて、それを夢中になってworkflowyにメモしていた。まずこのフレーズを企画説明の動画配信タイトルだとして、その台本という体で企画の意図と方向性について書いていく。いつもなにかアイデアが浮かぶときは、自分の境遇や周りの動きから重層決定されるように、ひとつのフレーズがそれをいつどこで誰に向けて言うか、書くかという具体的な状況とセットになって出てくる。哲学はいま、「哲学」と書かれた箱の中に入っているが、その箱から出るとそれはなくなっている。なぜ箱の中に入るのではなく、それを外からいじったり、その箱を持ち歩いたりできないのか。精読か入門的解説かという解像度の操作とは別に、制度や商業構造とくっついたコンテンツあたりのサイズ感の問題があり、哲学はその歴史的な長さ、学知としての深さに寄りかかるあまり、外に張り出しているのは偉そうな看板だけ、持ち帰れるのはぺらぺらのチラシだけで、中身は箱から出られなくなっている。

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2月12日

昨日の夜中にジムに行ったら日曜祝日は営業時間が短くなって閉まっていて、今日も振替休日の月曜なので夕方に行った。30分かけて歩いて行って、ゆっくりストレッチをして、20分めいっぱい走る。汗と振動で耳の中のワイヤレスイヤホンが取れそうになり、ポケットに入れる。ヘアバンドがいるのかもしれない。20分で3キロちょっとだとすると、10分で1.5キロ、陸上部だったとき1500mが5分ぴったりくらいだったので、いちばん速かったときの半分の速さで4倍の時間を走っていることになる。そういう計算で頭をいっぱいにして走り終えて、ウェイトのフロアに降りる。ウェイトだけでも消費カロリー的には稼げるのだろうが、汗もかかないしスクワットとデッドリフト以外は息も上がらないのでどうにも運動した気にならない。しっかり走ってから大きな筋肉を使う種目に移ると心拍数が上がった状態を長く維持できる気がする。デッドリフト、懸垂、ラットプルダウン、ダンベルローイングと「引く」系の種目を4セットずつやって着替えて帰る。帰りは関内から地下鉄に乗った。

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2月11日

なんかいいバイトないっすかね。

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2月10日

比較的寒くない日で、妻が近所の歩いたことのないところを歩きたいと言って、去年平倉さんがやっていたRAUの展示でもらったツアーのルートを歩くことにした。去年根岸の台地に登って元町に降りるルートを歩いたので、今回は黄金町側から野毛山に登って野毛に降りるルートを歩くことにする。ジャック&ベティの脇を抜けて住宅街の脇道に入ると、そこから坂が始まる。街の高さをみるみる追い越して、坂を登りきった先に開けた公園に展望台がある。向かいにかつて登った台地が、その手前にいつもの街が横たわっている。見えないイセザキモールをなぞるように関内駅の CERTE、伊勢佐木町のドンキ、市大病院と左から順に指さす。パネルにそこらはすべてかつて海で、江戸時代に吉田官兵衛の計画で埋め立てられ「吉田新田」になったところなのだと書いてある。実際歩いてみるといい。こんな変な街に住んだらほかはどこも退屈に思えるだろう。無料で入れる野毛山動物園に入って園内をひととおり回って、日本でここにしかいないカグーという飛べない鳥を見る。キウイみたいなかたちで、羽根がグレー、くちばしがオレンジ。野毛に降りて焼肉を食べて、イセザキモールを歩いて帰った。

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2月9日

日記と現代思想の最後の回のミニレポートの採点をしていた。授業全体の感想も書くように言っていて、いくつも嬉しい感想があった。毎週この講義を受けるのが楽しみだったとか、哲学にはまったく興味がなかったが講義を聴いて千葉さんや僕の文章を読むようになったとか、デリダを借りて読んでみたがまったくわからなかったとか、自分で日記を始めてみているとか。立命館のほうの授業もそうだが、この2年で教師として得られる喜びはひととおり得た気がする。自分にも講義の内容にもまったく興味がないひとがわらわらいる場所でどこまでできるのか試せる場所としては大学はとてもいい。

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